アメリカ新大統領と日本の選択
渡部恒雄氏インタビュー(全2回)
第2回 日本のための選択「プランAプラス」

日本外交の重要性はますます増している(写真は外務省)
渡部恒雄(笹川平和財団上席フェロー)
◇大統領選後のアメリカ社会の行方
トランプ支持の白人低所得労働者層が米国の共和党と民主党の主流派から見捨てられてきたという不満感は根強く、これがトランプ氏を支持するMAGA(アメリカを再び偉大に)運動の原動力です。トランプ氏が、この層を代弁するイデオローグのJDヴァンス氏を副大統領候補に指名したのが、自分の引退後もMAGA運動を継続してほしいという希望が反映していると思います。
ただし、アメリカの歴史を振り返れば、このような草の根のポピュリズムは何度か起こっていますが、結局は既存政党に吸収されてきました。まさにいま、共和党がMAGAに乗っ取られるようですが、大きな目でみればMAGAが吸収されているともいえます。少なくとも、共和党はトランプ氏を支援して、白人の低所得者層に配慮はしておりますが、経済政策は富裕層と大企業優遇策を継続しております。
アメリカに進歩主義(Progressivism)が現れたのは、19世紀の後半に工業化が進み、独占資本が形成され、工場労働者を保護する法律などない時代、その矛盾を指摘して社会主義を目指すマルキシズムが世界中に力をもった時代でした。農民運動と労働運動から、既存の民主党と共和党はエリートの利益代表で資本家の搾取に対処できないと異議申し立てをする、人民党(Populist Party)という現在のポピュリストの語源になった政党が1891年に結成されます。アメリカでは選挙制度の構造上、第三の政党が力を拡大するのは難しく、結局、民主党が人民党のリーダーを副大統領候補にして、彼らが要求していた労働者や農民の待遇改善を受け入れることで、人民党は民主党に吸収され消滅していきます。
共和党側でもセオドア・ルーズベルトが、国家は積極的に資本を規制し、労働者を保護すべきだと説き、共和党の大統領を二期務めた後、後継者によって共和党が後戻りしたのを見て党を飛び出し、第三政党の「進歩党Progressive party」を結成して1912年に大統領選挙に立候補しました。その後も進歩党の名前の政党は登場しますが、ルーズベルトの進歩党は、彼の大統領選挙の落選により衰退し、人々は共和党に戻っていきます。ただし重要なことは、これらの進歩主義の政治の動きを受けて、世界でも1919年に国際労働機関(ILO)が作られ、米国内でも労働者の権利保護が進んだことです。
現在のアメリカも世界も、経済のグローバル化により、貧富の格差が再び拡大しており、米国でも世界でも、富の偏在に対抗する右派と左派のポピュリズムが活発化しています。今のアメリカ政治が国内の格差是正に向けてどこまで本気で動くことができるのかは、予断を許しません。本来であれば、左派を抱え労働組合の支持を受けてきた民主党政権に労働者層は期待してきましたが、クリントン政権とオバマ政権は、中道寄りの経済成長と企業重視路線にシフトしたため、失望した多くの労働者層がトランプ氏に期待することになりました。
一方で、どちらかといえば自由放任経済(レッセフェール)と高所得層と大企業の利益を代表してきた共和党が、トランプ氏に乗っ取られたとはいえ、労働者重視の政策を遂行できるのかという大きな疑問が残ります。所得の再分配ではなく減税を志向しつつ、外国製品に関税をかけて労働者を救う原資にするというトランプ氏の政策は、政治的にアピールするかもしれませんが、現実の経済の理屈では無理があります。トランプ氏がいなくなった後の共和党が、あるいは、トランプ氏が後継者として期待するヴァンス氏が、共和党を白人労働者を包含できるような政党に変えることができるのかは、高額所得者からの資金に依存する共和党の構造上からみても、至難の技だと思います。
◇望まれる東アジア・シフトの本格化
トランプ再選への懸念の一つは、トランプ氏がウクライナ支援に後ろ向きなことと、ロシア寄りの姿勢です。副大統領候補のヴァンス氏は、ウクライナ支援は欧州に任せ、米国は真のライバルの中国と競争するために資源を集中すべきだという考え方を示しています。この考え方は、トランプ派のジョシュ・ホーリー上院議員や、次期トランプ政権入りの可能性が高いエルブリッジ・コルビー元国防次官補代理(第一次トランプ政権)などが共有しています。
これは選挙戦で自国の負担を嫌がる有権者にはアピールする主張ですが、既存の国際秩序を弱体化させ、アメリカの世界への影響力を弱めてしまい、長期的にはアメリカの国益を損ねます。現実的にはバイデン政権が行ったように、インド太平洋とヨーロッパの同盟国の双方との緊密な協力関係を築いて、同盟国の負担増を静かに働きかけて、アメリカの負担を減らしつつ、国際秩序と自国の世界への影響力を維持するのが、賢い選択だと思います。しかし、それではこれまでの指導者に幻滅し、日々の苦しい生活を送っているアメリカの労働者層には政治的にアピールしないのです。
トランプ氏が、アメリカは世界を守るコストを過大に負担してきたのに、恩恵を受ける同盟国はそれにただ乗りしてきており、もっと自国の防衛や、ウクライナ支援などに汗をかいて努力せよ、という首相にも一理あります。とはいえ、アメリカが大きな負担を引き受けているからこそ、金融やインターネットなどの主要産業で、世界がアメリカのリーダーシップを容認し、圧倒的な影響力を行使できて、そこから大きな利益を得ていることも事実です。これまでの世界における優位性(プライマシー)が維持できなくなれば損をするのはアメリカ自身です。トランプ氏が同盟国との関係を切り、その優位性を手放す選択をすれば、欧州ではロシアの拡張姿勢に歯止めがなくなり、アメリカの経済と安全にとって最も重要な東アジアでも、中国が周辺国に影響力を行使して、アメリカが地域から排除されるような世界が現出しかねません。トランプ氏はともかく、トランプ陣営の専門家もそこはわかっているはずです。
例えば、中国人民解放軍が台湾統一を成し遂げ、日本列島、台湾、フィリピンに連なる第一列島線を超えて、太平洋での軍事行動の自由を手に入れれば、太平洋に面したアメリカ西海岸が直接の脅威にさらされます。台湾が中国の手に落ちないようにすることは、米国の領域防衛にとっても譲れない一線のはずです。そして、ロシアのウクライナ侵略による現状変更の試みが失敗となる前例となれば、中国の指導者も、台湾への武力による統一へのハードルが上がります。
アメリカの相対的な国力が下がり、その軍事資源が限られている以上、バイデン大統領もトランプ氏のような一方的な言い方はしませんが、同盟国に応分の努力を求めてきています。日本は地政学的な現状を理解して、アメリカにとっても最善な政策を、長らく築きあげた同盟パートナーとして、米国大統領およびそのスタッフと共有していく必要があります。トランプ政権となろうが、ハリス政権となろうが、日本自身の防衛努力の強化し、地域を安定させるための努力をする必要が、今こそ求められる時期はありません。
◇現状維持を超える新たな提言
日本にとって幸いなのは、自民党と公明党の連立政権が安定しており、野党の中にも日米同盟を否定する声は小さく、これまでの外交・安全保障政策を大きく変化させる要素は少ないことです。
日本の次期首相とトランプ氏との相性が気になる人もいるでしょう。相性は試してみなければわかりません。しかし大事なことは、安倍晋三氏が当時のトランプ大統領とうまくやれたのは、安定した政権基盤を持ち、トランプ氏当選から政権の終わりまで、一貫してつきあえたことが大きかったと思います。アメリカ側も日本の首相がコロコロと替わらないでほしいのが本音で、次の首相に求められる課題は長期安定政権となります。
その長期安定政権には、安倍政権から現在の岸田政権まで、良好に維持してきた日本の針路のかじ取りが期待されます。私が参加する笹川平和財団のプロジェクトでは現状維持をプランAとし、現状変更のプランBやCも検討した上で、最も望ましい選択肢として、現状のプランAをグレードアップする「プラン A プラス」戦略を提唱しています。
大統領選でどちらが勝っても、日米同盟を基軸とする「プランA」を変えるべきではありません。しかし、以前のように日米同盟だけに頼っているだけでは、日本の安全と繁栄のために十分ではないのが、現在の国際情勢です。日本が、インド太平洋の安定という自国の生き残りと繁栄のための死活的な課題に、より大きな責任を引き受ける選択肢が「プランAプラス」のイメージです。例えば、近年日本が進めてきたQUAD(日米豪印)、日米韓、NATO(北大西洋条約機構)との協力強化などが「プラス」の部分で、わが国の防衛能力を強化して、地域の安定に積極的に寄与していくことです。
日本の防衛力強化と日米同盟強化は、中国にとっては脅威でもあります。だからこそ、中国が既存の国際ルールを変更する動きを見せている中で、米国および現状維持を望む国家との協力関係が、対中抑止力を形成することになります。同時に、米中対立が高まる中で、緊張が高まるリスクは十分あります。とはいえ、インド太平洋地域の国家で、米中の武力衝突を望む国家は日本を含めてどこもありませんし、アメリカも中国も、心の底からお互いの武力衝突を避けたいと思っているはずです。昨年暮れの米中首脳会談で、不慮の衝突による危機回避のための連絡メカニズムの設置に合意したのはその証拠です。
日本の「プランAプラス」は、ASEAN諸国やヨーロッパ各国との協力を進め、中国が世界的に孤立しかねない暴発への抑止力を形成するとともに、多角的な中国とのコミュニケーションチャンネルを形成・維持して、米中や日中の間で、偶発的な衝突を防ぐような仕組みを構築していくことも重要です。中国のとなりに位置するアメリカの同盟国の日本は、米軍基地をホストしていることもあり、きわめて安定した対中抑止力を維持しています。中国はアメリカとは戦争をしたくはないので、当然ながら日本との戦争も望みません。
一方で、台湾有事への米国の軍事関与などで、米中が戦争状態になれば日本は逃げようのない地政学的位置にあります。ですので、経済と安全保障でも中国とアメリカの両国に一定の影響力を維持し、中国の暴発を抑止すると同時に、米中の偶発の衝突を回避するために、最大限の努力が必要です。そのためにも、既存の日米同盟維持というプランAに加えて、日本自身の防衛力強化、アメリカ以外の関係国との関係強化というプランAプラスが必要です。
◇日本のなすべきこと
あらためて、「プランAプラス」として提示する日本のなすべきことを確認すると、日本自身の防衛力強化、QUAD(日米豪印)、日米韓という地域の米国の同盟国・パートナー国との横の関係の強化、EU(欧州連合)や米欧の多国間同盟であるNATO(北大西洋条約機構)との協力強化、ASEAN(東南アジア諸国連合)との協力の深化、そしてグローバルサウスとの外交など、幅広い外交手段により、自国を取り巻くインド太平洋地域の安全と繁栄を維持するという目標です。今の日本には、以前のような圧倒的な経済力はないものの、世界第三位の経済規模と、世界一の軍事力を持つアメリカの同盟国として自衛隊には世界レベルの防衛力を維持しています。例えば、台湾有事の世界的な経済的影響を防ぐ方策を、ヨーロッパ諸国や、非同盟のインドとも、緊密に話し合うことができるのが強味です。中国にとっても、台湾進攻後に欧州連合からの経済政策を受けることは避けたいでしょうし、台湾進攻に軍事力を集中させた場合、背面に位置するインドの軍事力は気になるはずで、平時の緊密な協力が抑止力を形成します。
アメリカ一強の時代には必要なかったアメリカの他の同盟国と日本との円滑化協定(RAA)や物品・役務相互提供協定(ACSA)などは、世界で紛争が頻発する中で、アメリカが手薄になる部分を日本や他の同盟国が埋めようとしてくれるものだとアメリカも歓迎しています。日本がRAAを結んだ、イギリス、オーストラリア、フィリピンにとっても、アメリカだけでなく日本との協力関係に期待する部分があるからで、地域秩序を維持するための多国間協力がより重層的になると同時に、アメリカの心理的な負担も軽くなる良い流れだと思います。
日本は、第二次世界大戦で東南アジア諸国にも多大な被害をもたらし、戦後の東南アジア諸国に大規模な投資を始めた当初は反日デモなどで、相当な反発を受けました。しかし、そのような経験もあって、時間をかけて東南アジアと良好な関係を築いてきたことが今になれば、重要な外交的資産になっていると思います。「軍事大国にならず平和と繁栄に貢献」し、東南アジア諸国と「心と心の触れあう信頼関係を構築する」と宣言した1972年の福田ドクトリンの資産は今も残っております。
東南アジアの国々はそれぞれの規模が小さいこともあり、中国とアメリカのどちらを選ぶかという二項対立の選択を避けてバランスを取ってきました。そのような中で、日本のような存在は、別の選択肢というほどではないにせよ、その役割には一定の期待があり、地域での重要性が増していることを認識すべきだと思います。
◇中国に対処するために
中国が南シナ海で国連海洋法を無視して、自国の領土・領海を拡大し、フィリピンなどの沿岸国と対立を深めていることは戦略的に下策だと思います。中国からすれば南シナ海全体をコントロールすることで、自国のシーレーンを守り、日本や韓国などのシーレーンを遮断する圧力がかけられることと、アメリカに届く核ミサイルを搭載した原子力潜水艦を自由に航行させることで核抑止力を形成するという、二つの大きな戦略性を認識しているのでしょう。しかし一方で、周辺諸国の危機感を強め、ライバルの米国の同盟国やパートナー国に対して、結果的に一致して対抗するように促いたわけですから、長期的には賢い戦略とはいえません。
とはいえ周辺国が「中国は大国だから仕方がない」と諦め、アメリカが過大な負担を嫌がり、この地域から手を引けば、その目論見は成功します。この周辺国がまとまって対抗しようという枠組みを作ることと、アメリカをこの地域に関与させ続けることについては、日本の努力が重要になります。先に述べた「プランAプラス」の「プラス」の部分がどうしても必要になるのです。
そういう手間のかかる外交交渉を、時間とエネルギーをかけて粘り強く実行してくれる政治家がいなければ、日本は本当の意味でグローバルプレーヤーにはなれませんし、なにより自国の安全と繁栄を守れません。国民が政治家の質を決めるのです。中国に対抗するなんて経済的に損だし、怖いし、イヤだ、防衛予算への負担は嫌だ、と考える国民を説得するのも政治家の役割です。役所がいくら頑張ってもできません。日本人が自国の外交能力に悲観的な理由の一つに、戦後は自力では国を守れないと諦めているところがあり、日本自身の防衛力の強化も「プラス」の要素として重要課題です。
もし「負担はもうイヤだ」と孤立主義が復活しているアメリカが今後、東アジアから手を引けば、国際情勢は弱肉強食になり、独力で日本を守ることも難しくなります。日本だけが平和ならそれでいいと考えるのではなく、地道に周辺諸国と連携して地域を安定させ、長期的に日本の平和と繁栄を維持する、そういう戦略的思考を有権者と共有できる政治指導者の登場が待たれます。
中国に対する効果的な抑止力とは、指導者が軍事力を行使する心理的なハードルを上げることを意味します。決定的な軍事的反撃力の保持や経済制裁の脅しが一義的な手段ですが、長期的には戦略的な教訓を指導者に印象付けることも重要です。昔なら近隣諸国を攻撃し領土を増やせば国は豊かになったのに、今は制裁を受けてデメリットのほうが多いから、無理はしないでおこうと指導者に思わせることが重要です。
しかし経済成長が停滞する中、国内のナショナリズムを敵に回すわけにはいかない習近平氏にとって、国家と自身の宿願でもある台湾統一という目標を諦めることはできません。しかも、習氏個人の独裁化が進み、誰がアドバイスをしているのか、外からは見えない状況で、本人の真意を読み取るのが難しい怖さもあります。その点で、日本は中国への反面教師となる経験をしております。1931年の満州事変以来、日本は中国で侵略戦争を続け中国側と和平ができずに苦労していました。米ルーズベルト政権は中国の国民党政権を支援し、日本に経済制裁を行っておりました。当時の日本はアメリカと戦争になれば勝利する見込みは薄く、大変なことになるとわかっていましたが、先に延ばすよりは、今行うほうがましだという合理的とは思えない選択で、対米開戦に踏み切りました。今の中国の習近平氏が「台湾を奪取できるのは今しかない」と思いこんで、無謀な賭けをさせないためには、世界はどのようなメッセージを送ればいいのか、歴史の教訓を知っている日本こそが、よく考えて行動する必要があります。
◇地政学的発想のすすめ
日本は中国侵略に失敗し、アメリカと連合国との戦争に敗れました。しかし戦後の日本は幸運でした。アメリカは中国を東アジアの主要同盟国にするつもりで、日本と戦った蔣介石率いる国民党政権を支援しましたが、日本の敗戦後に国共内戦が起こり、国民党は敗れて台湾に逃れ、勝利した中国共産党はアメリカと組もうとしなかっただけでなく、朝鮮戦争では中華人民共和国の義勇兵は米軍と戦い、アメリカは敗戦国の日本を主要同盟国にせざるを得なくなりました。戦後日本の平和と繁栄は、このような地政学上の僥倖によってもたらされた面を忘れてはいけません。
日本の地政学上の悪夢は、戦後すぐにアメリカが考えていたように、米中が手を結び、東アジアを二国で統治するような体制です。そうなれば、日本や東南アジア諸国のような小さい国家の主権や利益は、米中の思惑に委ねられます。事実、オバマ政権時代に、中国は米中G2論を展開して、そのような体制での妥協を米国に持ち掛けていました。
日本にとって幸いなことに、習近平氏率いる中国は、アメリカとの対立を避けて、自国の利益を安定させていく長期戦略に失敗しています。アメリカは中国との長期的な競争戦略を開始しましたが、これにより同盟国の日本の価値が上がりました。もちろん、米中対立が日本にもたらすマイナスの部分も多くありますが、少なくとも、日本の安全を保障する手段として米国の同盟を維持できることは、日本にとっては大きな資産です。
日本にとっての別の悪夢は、中国が力による台湾統一を強引に行い、米国がこれに対して軍事介入を行い米中間の武力衝突が起こることです。ただし中国は圧倒的な軍事力を持つアメリカとの戦争は望んでおりません。米国の軍事介入させずに台湾を統一する方策を検討しているはずです。
おそらく中国は、最初から軍事力を前面に出すことはせず、ロシアが2014年にクリミアを併合したようなハイブリッド戦や、台湾への経済封鎖を行い台湾の指導部に圧力をかけるなどの複数のシナリオを検討しているはずです。2022年2月のロシアのウクライナ侵攻も、プーチン大統領は、緒戦で首都キーウを包囲して、ウクライナに親ロシア政権を作るのが目的であり、現在のようなウクライナとの長期的な戦争は意図していなかったはずです。ところが当初の目的は達成されず、戦争が泥沼化してしまいました。
習近平氏がロシアのウクライナ開戦から何を学ぶのかは重要です。日本のような東アジアの国家がNATOとともに、ウクライナを支援する理由がここにあります。そして、中国の経済と密接に繋がる欧州諸国を、インド太平洋の安全保障に関与させる意味もそこにあります。これも日本の「プランAプラス」構想の重要な要素の一つです。
日本は今や世界の平和と繁栄に貢献できる最重要な国家の一つになった、といっても過言ではないと思います。
(取材・構成 編集部)
渡部恒雄(わたなべ・つねお)
笹川平和財団上席フェロー。1963年生まれ、東北大学歯学部卒業。95年に米ニュースクールで政治学修士課程修了、戦略国際研究所(CSIS)に入所し、2003年に上級研究員。05年に帰国、三井物産戦略研究所、東京財団を経て現職。主な著書に『2021年以後の世界秩序 国際情勢を読む20のアングル』(新潮新書)など。